以前も書いたことがありますが、勤務先の専務は超のつく倹約家で、使えそうなものは少々問題があろうが絶対捨てません。
捨てないだけでなく、佃煮が入っていた木箱、重箱、子供が彫った木皿など、機能性に大いに問題があり、かつ仕事場の雰囲気に合わないものを
「何かに使えると思って」
と会社に持ち込みます。
「家で使えないものは、会社でも使えないから」
と若社長(専務の息子)がクギをさしても文字通り糠に釘。
「そうよね、古いものじゃなくて新しいもののほうがいいわね」
人との摩擦を極力避けたがるので、表面上はすぐ、このように同意するのですが、考えを改めたことはありません。
メイワクな倹約精神に従業員も困っているのですが、創業者の苦労もわかるし、物を大切にするというのは悪いことではないので、やめてくださいとも言えません。
昔から職場の一角が経営者の私的スペースになっており、そこに大量の食器、花瓶、置き物、本、子供のすべりだいなんかも置かれています。
私物の山が放つ所帯じみた瘴気が会社を汚染しておる!
と従業員の誰もが思ってます。
が、なんとこのたび社屋の大改装をすることになり、これらの私物が完全撤去されることになりました。
「老いては子に従え」
己に言い聞かせつつ、専務が片付けにいそしんでいるところに、夫である前社長が通りかかりました。
「播磨先生からいただいた結婚祝い、もう捨てちゃっていい?」
専務の手には金属製の飾り皿がありました。
播磨先生というのは前社長の恩師です。
前社長は播磨先生を尊敬崇拝しまくっていて、師の教えを従業員にも伝えたいと思うらしく、播磨先生の著書を朗読しながら『人が生きるということは~』みたいな講義を行ったこともあります。
夫の説話に水飲み鳥よろしく誰よりも深くうなずく妻。
絵に描いたような、というか、マンガのようなおしどり夫婦。
『夫唱婦随こそ良妻賢母への道、男はおだてりゃ木に登る』
を人生訓とする専務なのに、播磨先生ご下賜の記念品を『捨てる』だなんて、あたしゃ耳を疑いました。
「う~ん…」
突然決断を迫られ、困る前社長。← 家庭内の力関係が見てとれる
「そんな…結婚祝いを捨てることはないんじゃないですか?」
意表をつかれた私はつい口をはさんでしまいました。
「そうよねぇ?捨てることはないわね??この辺に置いておけばいいわよね(^_-)v???」
「大切なものなんですから、家へ持って帰ってください!」
『かもたぬきが「ぜひとっておいたら?」って言ったから残した』
などと人のせいにされてはたまらないので、キッパリ申し上げました。
ふ~ん。夫が入れ込むほど当然ながら妻は播磨先生に愛着はなく、何の役にもたたない皿を自宅に持ち帰るのはイヤなんだな。
仕事にも使えないし、そういうものはアッサリ捨てられるんだな。
つまりここにあるガラクタは全て「専務が要らなくなったもの」なんだな。
だけど捨てることには抵抗があるから、使えそうなものは『倹約』というオブラートに包んで、会社に押し付けてるんだな(笑)。
「うふふ、35年前よね~、お父さんが大好きな大好きな播磨先生…ねぇ♪」
「捨てる」と言った舌の根も乾かぬうちに、この愛情深い妻っぽい発言。
こうして夫はいいように扱われていくのだな…と思いました。
それにしても改装を決行した若社長はエライ!
改装後には、良い緊張感に包まれた、スッキリとした職場になることを願っています。
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