コブリン ピアノリサイタル@浜離宮朝日ホール
11月6日のプログラム
モーツァルト:ピアノソナタK576
ベートーヴェン:ピアノソナタ第4番
ショパン:バラード第1番、4つの即興曲、バラード第4番
※アンコール
ショパン:ノクターン第4番、エチュードop.10-5,11
ハイドン:メヌエット
浜離宮朝日ホールはピアノ演奏会にちょうどいい大きさで、これからもずっとこのホールでやってほしいな…と思う。前から3列目の真ん中あたりの席、手元がイマイチよくみえなかったものの、お顔はバッチリ、心配だったピアノの音もとてもよく聴こえた。前のほうだったのでお客さんの入りはよくわからなかったが、いい感じに埋まっていたと思う。
今年のコブリンはウッスラと泥棒ヒゲをたくわえ、黒のクルーネックにジャケットというスタイルで登場。
一曲目はモーツアルトの17番ソナタ。番号でいわれてもワカンナイんだけど曲聴くとわかるやつ。気持ちよい音楽。モーツァルトとコブリン君はあんまり結びつかないけれど、昨年も弾いたし、ご本人は嫌いじゃないんだろう。最初の曲が始まって思うことはいつも同じ。なんて美しい音なんでしょう…(惚)。もう10回以上聴いているけど、わかってるんだけど必ずそう感じる。
今回、コブリンは演奏中雑音をほとんど立てない、ということに気が付いた。手が鍵盤を触る音はまったく聞こえない。つめが当たる音とか、そういう種類のもの。鍵盤が底に当たる音はかすかに聞こえるときがある。ペダルを踏むのも、足を踏み代えるのも静か(マツーエフはドッタンバッタン床を踏みならし、まさにmonster stomp)。ピアノの調整もよかったのだろう。余計な所作はしない、音は立てない、そういう部分にも神経を張り巡らしてる気がする。っていうかしっかりと身についているんだろう。が、本人が息をする音は結構ハデ。ズーヒーズーヒー。瞬間、ウシガエルみたいなうなり声がきこえるときがあり、たぶん歌ってる(笑)。
二曲目、ベートーヴェン。ソナタ4番は知らない曲。来年パリでオールベートーヴェンのリサイタルがあるので聴きにいきてー。緩徐楽章はまさにニルヴァーナ。瞑想世界。こころが浄化される。ああ、来年も必ず聴きにきますよとここで決意。後半早いパッセージの連続があり『ド近眼の探し物』態勢になる。カクッと前傾して鍵盤をみつめるこの姿をみないとコブリンを見た気がしない。途中すごい早業でメガネを直していたのが笑えた。最近、演奏姿勢が良くなってきていると思うが気のせいか。猫背じゃなくなってきた。曲によるのかも。
休憩中にkumiさんとおしゃべり。後半はオールショパン。バラード第1番からスタート。この曲は有名すぎて「こうきて、こうきて、つぎはこうくる」ってのが読めてしまうのだが、今まで聴いたことのないバラ1だった。ドラマチックというよりも、たゆたう舟のよう、子守唄のよう。伸縮自在のつややかな織物が波打つように曲は進み、感情が高まっても破裂することはない。ためてドッカーン、みたいなところが皆無。どんな素早い動きでも手が忙しくても、音楽がはみ出さない。ショパン全集CDに収録されている演奏と共通するもの。誰にどう評されようとも「コブリンはコブリンです」。自分の道を歩いていく覚悟と美意識を強く感じた。
つづいて即興曲集。こちらもあわてず騒がず。ふっと浮かんだ曲想を「こんなのはどう?」「こういうアイデアもいいでしょ?」と弾いてみせているよう。「即興曲」という題そのものの演奏。白眉は意外にも幻想即興曲。サワサワッと枯葉が風に舞うような右手。左手の分散和音が感情をクッキリと表す。こんなにいいたいことが伝わってくる幻想即興曲は初めてだった。この曲のどこがいいのか最近わからなくなっていたのだけど、こんな多彩な表現もできるのか。驚いた。こんな演奏ができたらどんなに素晴らしいだろうと思う。
プログラム最後はバラード第4番。すっかり入り込んでしまい、詳細をあまり覚えていない。強く、美しく、切なく(昔の篠原涼子の歌みたい 笑)、希望のある世界。静かなる感動に2時間ジワジワと攻められて、気が付けば落涙寸前。
アンコール1曲目はショパンのノクターン4番。深い。追い討ち。もーだめ。しかしここで泣いてしまうと化粧が崩れ、この後のサイン会に差し支えるので、天井のライトを眺めて必死にこらえる。ここらでラフマニノフあたりの景気いいヤツを聴きたいと思ったが、ショパンop.10から2曲。職人芸を披露。やまない拍手に4曲目。今度こそは、と期待するも毎度おなじみのハイドンさん。あのトリル攻撃はすごいよなー。小鳥の羽ばたきのようだ。
今回、前のほうの席だったので、コブリンがよく見えておもしろかった。ステージへの出入りは毎度おなじみのスタスタ歩きで、相変わらずイスの奥に立つ。笑顔(小)でご挨拶。お客さんのほうに向くときには常に笑みを絶やさない。全く笑わなかった彼が嘘のよう。袖に戻るとあっという間に回れ右して再登場。これも毎度。前半の終わりには笑顔(中)も出た。アンコールの最後には笑顔(特大)も放出し、演歌歌手のように口をぱくぱくさせて何か言っていた(多分謝辞であろう)。やっぱりね、スマイル0円なんだから、絶対に笑ったほうが得だって。今回が一番ピアニストとの心の距離が近い感じがしたもん。いっつもサイン会ではニコニコしてるのに、舞台上では誰が言ったか知らないが『ミスターアイスマン』で、「何でよ~」と納得いかなかったので、この変化は大大大歓迎。作り笑いなんかしない人だろうから、抵抗なく笑えるようになったんだと思う。
いい演奏会であった証拠にサイン会は長蛇の列。クロークで荷物を受け取っていたら出遅れてしまい、かなり後ろのほうになってしまった。最終新幹線に間に合うか心配になってきたが、もし乗り遅れたら大垣行き夜行に乗ればいいや、とにかく会ってから帰るぜい!と腹をくくる。後ろに並んでいた子が「うん、よかったよ~。ショパンはね~、さみしい感じだった」と家族に電話していた。そういえば隣の座席の推定音大生さん達は「なんであんなに音きれいなの」「何度も泣いちゃった」と話していた。ほんと、よかったね。しばらくしてコブリン登場。おつかれでゴンス。サインを始めたら早いのなんの。ちゃんと握手もしてくれてあのスピード。さあ、順番だ。特に話しかける内容も考えてなかったのだが、思いつくときはサッと思いつくもので。「お願いします」とCDをテーブルに置き(手渡すとそれだけ短く済んでしまうので)「あいむ らんにんぐ ゆあ ふぁんさいと。じゃぱにーず おんりー。ゆーあーぐれいと。」と伝えた。ウンウンとうなずいて笑ってくれた。ホンマに通じたんかいな。そういえばゴルラッチにも「ぐれいと!」と言ったっけな~。ボキャ貧ゆえ使いまわし御免。
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コメント
わ〜、コブリンのバラードを聴きにいきてー!(笑)
と最初に想いました。
読んでいると私まで涙ぐみそうになって来ました。
ベートーヴェンも幻想即興曲も、数え切れない人間が弾いて来た曲を、コブリンはコブリン独自の世界観で茶hんと語れる、って言うところがすごいですよね。
ああ、聴きにいきてー。(爆)
本当に今こそ、コブリンの音が欲しいなと切実に思います。
サイン会、さすが、かもさん!!自分がファンサイトやっていると言うことを伝えられて良かったですね。英語かロシア語版も作ったらどうでしょう?(笑)
投稿: 乃琶 | 2007年11月 9日 (金) 12時44分
乃琶さん♪
やはりバラード2曲が特によかったです。ただ、その独自の世界は賛否両論だろうなあ。
コブリンはここ数年であるスタイルを確立したように思います。わたしにはそれがとても心地よいです。
kitaraに行く度にアンケートに「コブリン聴きてー」と書いてぜひ札幌に来てもらいましょう(笑)。
なぜ人は思いを伝えずにはいられないのでしょうか。とうとうカミングアウトしてしまいました。スッキリした~!ありがとうございます。しかし、コブリンが直接読めないところが重要なんですから、Japanese Onlyですよ(笑)。まさかオモチャにされているとは思うまい。
投稿: かもたぬき | 2007年11月 9日 (金) 23時41分
かもたぬきさんの興奮と愛情があふれ出ているレポート、
楽しく読ませていただきました♪
2年前に聴いた『幻想即興曲』は淡々と弾いていた印象が強いので、あの演奏がいったいどのように変化したのか気になります。
この間に何があったんでしょうか!?
サイン会でコブリンに話しかけているかもたぬきさんの姿がかなりリアルに想像できましたよ(笑)
投稿: Quesera | 2007年11月10日 (土) 12時15分
Queseraさん♪
興奮と愛情があふれでていましたか~?えへへ(謎)。
そうそう、幻想即興曲は前にも聴いたことがありますよね、あれは2年前でしたか。
オノレのブログを読み直してみたところ
>コブリンの幻想即興曲は、アッサリ味でした。
>冒頭の音量も結構控えめ。
>その続きも鬼のように盛り上がることはなく、淡々、タンタンと曲が進んでいきました。
>特に凝った解釈でもなく、サラッと通り過ぎた感じ。
という具合で、Queseraさんと同じ感想でした。
この2年間に何があったのか?
一部の間では『父親になって丸くなった』説がささやかれております。
あとアメリカ上陸成功による生活および精神の安定とか。
要らぬお世話ですな(笑)。
サイン会は興奮のせいか、昆布吉先生の表情をあまり思い出せないんです。いつもそうです。
得したんだか損したんだかよくわかりません。
浜コンの半年後に浜松で初めてサインもらったとき、昆布吉君は腰掛けていて、私が『あなたの笑顔はとってもチャーミングよっ!』といったら顔を上げてニコーッとしてくれて、ぎゃは~っ♪思い出すと鼻血が出そう。
色が白くてお肌つるつるでカッコイイ♪と思ったのをよーく覚えてます。
投稿: かもたぬき | 2007年11月10日 (土) 22時28分